預言書としての詩篇(から始まって、今や、様々)

愛される詩篇。その麗しさだけでなく、嘆き、呻きも共感を呼ぶが、預言書としての深い真実があることを解きほぐす。そのほか、つれづれに。

詩篇78(イスラエルの謎)

 「たとえ話、昔からの謎を語ろう」(2節)と、詩人の意図は明瞭だ。そして、それを先祖代々語り告げるようにと神が定めたというのである(3~5節)。その目的は「のちの世代の者が神を恐れるようになる為」である(6~8節)。結論は明らかだ。「神を恐れよ」である。
 尤もである。「それが人間にとって全てである」とソロモンはズバッと言っているのだから、いちいち昔話やらたとえ話やらを持ち出さなくてもよさそうなものだ。しかし詩人は延々と(昔話を)語る。代表的に12~16節だけを見ても分かるように、それは出エジプトの時の事だ。神はイスラエルを助けた。が、イスラエルは背いた。その繰り返し、それがイスラエルの歴史である。で、最終的には神の憐れみと約束の確かさが示された(70~72節)。何度背いても悔い改めへと導き、約束を成就させる為に救い出した神は真実なお方である。
 しかし詩人は、それを「昔からの謎」「たとえ話」と言うのである。つまり、人々は理解していない、という事だ。イスラエルとは何か、を。何故イスラエルは選ばれたのか、そして神はイスラエルに何をしたのか、を。勿論、昔から聞いて知ってる。けど悟っていない、と。
 パウロは「アブラハムの子孫が、そのまま子なのではない」と言う。バプテスマのヨハネは「肉のイスラエルなど石ころでも代わりが出来る」と言った。「主の御名を呼び求める者は誰でも救われる」という事において「ユダヤ人とギリシヤ人との区別はない」(ローマ10:12~13)。神の約束を信じて生まれた神の子、それが本当のイスラエルなのである。しかしユダヤ人は悟らなかった。「我らはアブラハムの子孫である」と誇った。そんな彼らに主は言われた。「忌まわしい」「あなた方も悔い改めないなら滅びる」と。
 イスラエルの歴史(すなわち旧約聖書)が、全ての民族に語り継がれているのは「神に信頼して、従って生きるようになる為」(6~8節)である。それが「昔からの謎」の答えだ。つまり、この世の旅路にどんな苦難があろうとも、神の約束に信頼し従う者を、神は必ず約束の地に導き入れる。それがイスラエルを通して全ての人に示されているのであり、その神に信頼するように、という事だ。それが神の願いである。

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