預言書としての詩篇(から始まって、今や、様々)

愛される詩篇。その麗しさだけでなく、嘆き、呻きも共感を呼ぶが、預言書としての深い真実があることを解きほぐす。そのほか、つれづれに。

もう、しるしは要らない(マタイ12:38~40)

12:38 そのとき、律法学者、パリサイ人たちのうちのある者がイエスに答えて言った。「先生。私たちは、あなたからしるしを見せていただきたいのです。」
12:39 しかし、イエスは答えて言われた。「悪い、姦淫の時代はしるしを求めています。だが預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。
12:40 ヨナは三日三晩大魚の腹の中にいましたが、同様に、人の子も三日三晩、地の中にいるからです。



 しるし(証拠としての奇跡)を見たい、と言うパリサイ人達に、主イエスは『ヨナのしるしの他にはしるしは与えられない』と言われた。が、実際には、主は数多くの奇跡を行なわれたではないだろうか。では、ヨナ以外にしるしは無いというのはどういうことか。


 「しるし」、それは「御言葉が、確か(本当・真実)である証拠」だ。どんな事実も、証明しなければ認められない。例えば、身分証明書だ。私が私であることは事実なのだが、それを証明することが求められる。同じように、神の存在・愛も事実であり、間違いないのだが、「証明しろ。証拠を見せろ」と人々は言う。それに対して、主は「すでに見せた」と言うのである。つまり、「証拠は、ヨナだ」というわけである。


 ヨナが三日三晩大魚の腹の中にいたのは、主イエスが十字架で死んで三日目によみがえることの予表であり、十字架のひな形である(と理解されているのだろうし、主も何故だか同様に、人の子も三日三晩、地の中にいると言われた。けれども、実は違う)ーーーーヨナは、捕えられて投げ込まれた(ヨナ1:12)。そのとき嵐はやんだ(1:15)が(おそらく縛られていたはずなので)海底まで沈んで海藻に絡まる(2:5)。その時点で溺れ死にかけていたのだ。そのとき祈ったら神は答えてくれて、魚に飲み込ませてくれたのである。つまり、魚に飲み込まれたというのは逃げた「罰」ではなく「救い」なのである。だから溶けなかったのだ。
 罰は、溺死しそうになったこと、だ。神に背いた報いだ。本来、そこで死ぬはずだった。しかし神は救った。そう、これ(神に背いて死ぬべき者が救われた)こそが、キリストによる救い(福音)の予表なのである。決して、ヨナが3日3晩闇の中にいたことのみがキリストのモデルなのではない。そもそも主が墓に葬られたのは2日2晩だ。復活は「3日目の朝」なのであるからーーーー(詳しくは10/26の記事参照)


 ちなみに、では何故「同様に、人の子も三日三晩、地の中にいる」と言われたのか。謎である。おそらく「一定期間」ということを示しているだけなのだろうかとは思う。
 例えば、エジプトに売られたヨセフもキリストのモデルとされているが、ヨセフが売られた値段は「銀20枚」(創世記37:28)だが、主イエスが売られたのは「銀30枚」(マタイ26:15)であり、一致しない。しかし、「銀20枚」は、レビ記27:5では5~20歳の男子の人身評価額とされているし、「銀30枚」は、奴隷の値段として出エジプト21:32に定められている。要は、どちらも奴隷として売られたということが共通しているのであって、数字の一致を問題としている訳ではないのである。だから、実際は2日2晩なのを、3日3晩と言ったからとて「一定期間」という趣旨だと理解すれば良いのだろう。




 ただ、キリストのモデルは何もヨナに限ったことではない。聖書(つまり旧約)全体が、救い主(十字架)の約束であり、神の愛の証明なのだ。その「救いの計画(福音)=十字架」を教える神の言葉(聖書)こそが、最大の証拠であり、それ以外には与えられない。それが「ヨナ以外には、しるしは無い」ということの意味なのだ。


 だから、ルカ16章で、「死人がよみがえれば、彼らも信じるだろう」という訴えに対して、アブラハムは「すでに与えられている聖書を信じないなら奇跡は無意味だ」と答えた。何故なら、奇跡は、あくまでも「神の言葉が真実であることの証拠」だからだ。


 時には、御言葉を信じる為のきっかけとして「奇跡」は必要かもしれない。主も、天に帰られた後も、御言葉に伴うしるしをもって御言葉を確かなものとされた。しかし、そうして、御言葉を信じた(御言葉は真実だということが分かった)なら、もはや、証拠は要らないあとは御言葉に信頼するのみだなのに、証拠としての奇跡(しるし)をことさらに求めるのは、御言葉への信頼が足りないということになる


 私達は「御言葉信じる為の証拠」を求める「幼子」ではなく、主は憐れみ深い、という御言葉を信じる「成長した大人」として、主の憐れみ(癒し、慰め、御業)を求めよう。

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